相続人のうち一部の者が相続放棄したい場合の方法とは?
鹿児島県のあいら行政書士坂元勝事務所 代表の坂元です。
本記事では、相続人のうち一部の者が相続財産を放棄したい場合の方法について解説しております。
モデルケース
相続財産:預金3,000万円 借金無し 不動産無し
相続人:妻 長男 二男 長女 二女 の5名
個別事情:長男・二男が生前の被相続人と仲が悪く、相続財産は要らないから相続放棄したいと言っている。他の相続人は遺産相続したいと考えている。兄弟姉妹の仲は特に悪くない。
相続放棄の方法
ご相談者の中には、今回の相談ケースのように相続人の一部の方が相続放棄を考えているようなケースもあります。
このような場合、どのような手続きを取ればよいのかを、長男・二男の負担なども踏まえて解説致します。
ほとんどの皆様が混同して「相続放棄」という文言を使われることが多いのですが、実務上は、家庭裁判所での相続放棄という方法と、相続分の放棄というのは厳密に異なっています。
その違いは、大まかには以下のようにご理解頂ければよいかと思います。
①家庭裁判所での相続放棄
・自身に相続財産が有ることを知ってから3カ月以内に相続放棄する本人から家庭裁判所への申述が必要。
・プラスの財産だけでなく、マイナスの財産の借金なども含めて放棄出来る。
・初めから相続人でなかったとみなされる。
②相続分の放棄
・特に期限は無い。
・家庭裁判所での手続は不要。遺産分割協議書内で積極(プラスの)財産の相続人とならないのみ。
・遺産分割協議書で実印の押印と印鑑証明書提出の協力のみで完結する。
・この手続でマイナスの財産の放棄は出来ない。
実務上、このようなご相談が有った際に良くおすすめするのが、財産が不要と思っている相続人にとって負担の少ない、②相続分の放棄 です。
①家庭裁判所での相続放棄 には、最低限、以下の資料が必要になります。
- 被相続人の住民票除票又は戸籍附票
- 申述人(放棄する方)の戸籍謄本
また、手続きを司法書士などに依頼する場合は、別途相続放棄手続の費用と報酬をお支払することになります。
被相続人が多額の借金を残しているなどの特殊な事情が無い限りは、このような経済的・事務的な負担をしてまで積極的(プラスの)財産を放棄しようと考える方はほとんど居ません。
本件のようなケースでは、むしろ遺産分割協議書内で長男・二男の二人が積極財産を相続することなく、実印の押印と印鑑証明書の提出で承諾を貰う形を取れば、長男・二男にとっても大きな負担が無く、応じて貰いやすいかと思います。
また、長男・二男が遺産分割協議書内で財産を相続しないという形を取った場合でも、後日「やはり財産が欲しい」と言われた場合は、再度、遺産分割協議書を作成して長男・二男が何らかの財産を取得するという取り決めをしない限りは、既に作成した遺産分割協議書の効力が続くため、長男・二男に相続権は有りません。
もちろん、長男・二男がどうしても自分達で相続放棄をしたいというのであれば、家庭裁判所での相続放棄手続を取って貰うという方法も有りますが、長男・二男にとっても煩雑な手続きとなることや、他の相続人が「長男・二男が相続放棄した証明」として「相続放棄申述受理証明書」を取得しなければ、銀行などの第三者に長男・二男が相続放棄したことを証明出来ないので、他の相続人にとっても負担が増えることが予想されることにより、あまりお勧めできる方法ではありません。
今回は、相続人の一部が相続を放棄する方法について、どのような方法が考えられるのかについて具体例をケースに解説させて頂きました。
ご参考になれば幸いです。
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